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随想6 コロナになった。

コロナになった。

 

東京では毎日のように感染者が右肩上がりに増えているから、そうなっても不自然とまでは言えないが、コロナ陽性になった。もともと喘息気味で俺は咳がひどいのだが、前に検査を受けたときは特に問題なかった。そもそも今も熱などはないのだが、この随筆という名の日記を書き始めた最初に、たいへんな体調不良については触れていた。おそらくあの辺でやられていたのだと思うが、もしくはあれでやられてとうとう免疫が敗北したのかもしれないが、コロナになったようだ。風邪と異なる自覚症状としては、味覚と嗅覚の変容を感じた。これには「まさかな」と思わされたが、そのまさかだった。

 

正直社交的な空間には全く行っていないが、電車に乗ったり喫茶店に行ったりはしていたので、完全な引きこもりというわけでもない。逆にいうとその程度でもダメなのかと思うと、生活習慣の問題というよりは、基礎的な免疫力の問題な気もしている。もっとも、元気な無症状患者だった可能性もあると思うが。これまでもほぼ行っていないが今後はより一層5名以上の社交場への顔出しは遠慮しようと決意した。

 

いちばんつらいときの方が死にそうだったためどちらかといえば今はマシだが、隔離で行動制限があるのが面倒くさい。それでもリモートで仕事ができるのでよかったといえばよかったのだが、この随筆でも言ってきたように、自室ではどうしようもなく仕事ができないときの気分転換先が奪われたため、仕事の能率は実質的にゼロになってしまった。クリエイティブなことはほとんどできない。自由を制限されることは本当にやばいことだ。

 

行動制限で買い物が出来なくなるので、東京都の支援に登録したところ、中一日あけてダンボール二箱分の食料が到着した。隔離は一週間程度だが、一週間は問題なく暮らせる物量だ。自分では能動的に茹でないパスタが入っていて、これもいい機会だな、と思った。レッドブルが4本くらい入っていて、レッドブルが差し入れされるのか、となんとなく呆気にとられた。生活保護に金ではなくクーポンを配るべき、という話があるが、これは仕送りを現金ではなく食料で行うような話であって、僕は食料を実家から送られた経験がない気がするのだが、いざこういう形で送られてみると実にありがたい、と素朴に思った。まあ外出できる自由があると「食い物より金」と思うのかもしれないが、外出できないからな。

 

『となり町戦争』や『マブラヴアンリミテッド』では、核心的な戦争が間近で生じているはずなのに、視点人物たちはまるで映画の観客がごとくずっと蚊帳の外、というような状況が描かれる。コロナもそういうところがあって、患者と医療現場だけが常に最前線であり、制限の影響で営業に障害が出る商売人たちがその周縁で、そこから漏れた自宅待機の市民たちはまさにフィクションの観客のようになってしまう。そういう意味ではコロナになって初めてわかる臨場感もないわけではないな、とは思った。もちろん、ならずにすむならならずに済ませたかったが。

 

唯一心残りがあるとすれば、僕は四回目のワクチン接種をしていなかったということだ。四回目から申請の仕方に変更があったのと、あまりにも忙しすぎるのでほとんどのプライベートな行動が劣後してしまったのと、代わりではないけれどインフルエンザの予防接種をしていたことによるサボりだ。こういうことで三回目までは打っていたのだが、四回目は打てなかった。別に自ら拒否したくて打たなかったわけではないが、打たなかったタイミングで感染したことを考えれば、別段今のところ致命傷は受けていないが、ワクチンを打てばよかったなと思う。ワクチンを打って副反応で致命的な被害が出た可能性がある人もいるようだが、僕の見る限りでは、ワクチンは打った方がいいように思う。最後は確率の問題でしかないが、コロナにかかって重症化するリスクの方が、ワクチンにやられるリスクよりも遥かに高く感じる。日本におけるコロナウィルス感染者の現在までの累積は2700万人。そのうち死亡者が5.4万人。ワクチン接種後の死亡事例はそもそもかなり少なく(厚生省が認定しているのは10例程度)、判明しているものも関連性が薄そうだったり、そもそも高齢者だったりで、自分のような年齢の人にはそもそも参考にならない。陽性になると行動制限が出るからまずこれが損害。その上、単純に体調が悪くなる可能性がある。そして重症化するかもしれない。当たり前だがコロナにはならないほうがいい。

 

まあそういう意見を別に誰かに押し付けたいというわけでもなく、これはただの独り言に過ぎないのだが、そもそもコロナになったなどという文章を書くかどうかは少し悩んだ。というか二日前段階の随筆(日記)ではボカしていた。あまりこういうことを書きたくないな、という気持ちになったからだが、二年前と比較すると状況も大きく変わったし、そもそも2700万人かかっているのだから、のべ人数ではあるといっても、日本の総人口の1/5くらいがかかっているわけで、自分が罹患してもおかしくない。そういうことで、事実を書き残しておいてもいいかな、と思って書くことにした。書いておいた方が、そりゃあ自分の仕事に能率が出ない言い訳にもなるよな、と思ったことは、1%程度はないわけでもない。ただ、せっかく随筆を始めたのだから、書いておいてもいいな、と思ったのが大部分の動機だ。